数教研ホームページへ /   NEWEST / < NEXT   BACK >

沖縄の絵本

 前回、ご紹介した沖縄のK先生から、以前に絵本を贈っていただいていました。
『つるちゃん』 『ユイタとアガイのわったあ家~』 (ともに金城明美作)の2冊です。
 『つるちゃん』は、この著者が、母親の幼い頃の戦争体験を残そうと書いたもの
です。
そのあとがきに、
   …絵もいろいろ迷いました。服の色、土の変わりようなど、どんな色をぬれば
    いいのか、そして残酷さ。わたしは「記録」することを大切に思いながらも、
    「絵本」であることを考えました。読む子どもたちが目をそらすほどの残酷な
    描写はないと思います…
とあります。
 この絵が、戦争の残酷さ・悲惨さを正確に伝えるものでなかったとして、でも、わたし
たちは、その残酷さを感じとることができます。それは、なぜでしょうか。

 それは、そこに、ことばがあるからではないでしょうか。でも、そのことばは、残酷さを
ストレートに意味する単語や文である必要はありません。そのできごとを、その事実を、
自分の目にし耳にしたことがらを、ただ丁寧に描写していく。「こわい」「つらい」「悲しい」
というストレートな感情表現をしなくても、そのできごとを組み立てていくことで、読者は、
そこに生まれる感情を共有できるのだと思います。

 わたしも、沖縄の歴史や戦争体験を記した本を何冊か読んだことがあります。わたしが
読んだのは絵本ではありません。文字だけの本です。その文字と、その文字を
くみあわせたことばと、そのことばをくみあわせた文を手がかりに、ある世界を作り上げ、
その中で、登場人物に重ね合わせるように自分も行動をとっていきます。わたしがイメージ
した映像は、実際のものとは違い、事実と異なるものかもしれません。でも、わたしが
わたしなりにイメージした世界の中で、登場人物といっしょに行動していくことで、本を
読み終わるころには、たいへん辛く重い気持ちになったりしました。
 ことばの力は、すごいなぁと思います。自分の経験していない、知らない世界を、そこに
浮かび上がらせることができ、その中で追体験・疑似体験ができるのですから。
 この作者のことばの中に
   …それからわたしは、母の体験を「形」にして残したいと、ずっと思っていました…
という部分があります。ことばは、ある世界、ある経験を「形」にすることができ、そして、
それを伝え、残すことができるのです。すごいですね。
 
 前回ご紹介した中村家住宅では、この『つるちゃん』の読み聞かせもしているようです。
目で見る文字と、耳で聞く音、という違いはあるかもしれませんが、ことばを手がかりに、
ある世界を浮かび上がらせていくということは同じだと思います。
 とくに、幼い子どもにとっては、耳で聞いたそのことばを手がかりに、目の前に浮かび
上がってくる世界は、とても生々しく、現実世界との区別がつかないくらいなのかも
しれません。
(以前、知り合いが、「うちの子が幼稚園で『赤ずきんちゃん』の読み聞かせをしてもらった
とき、おおかみのおそろしさに泣き出したのよ~」という話をしてくれました。
 子どもにとっては、ことばで作られた世界というのは、現実と区別がつかないくらいの
 現実感があるのかもしれませんね。) 
もしかしたら、経験の少ない子どもには、その世界を正確には理解できていないかも
しれませんが(私たち大人であっても、それは実体験ではない以上、正確な理解とは
いえないのだと思いますが)ともかく、子どもなりに、その世界を作り上げ、その中で
追体験することが大切なのだと思います。
 そして、そうであれば、大切な何かをことばにして形づくり、残し、伝えるという行為は、
とても大切な大人の役目なのだと思います。
 
 ところで、この絵本『つるちゃん』には、日本文の横に英訳文が載せられてあります。
この英訳をしたのが、K先生とそのだんなさまです。
 もう一冊の絵本『ユイタとアガイのわったあ家~』は、沖縄の家にまつわるお話なの
ですが、このモデルとなったのが『中村家住宅』なのだそうです。
 K先生と中村家住宅、関係の深い絵本2冊のご紹介でした。
機会があったら、みなさん、ぜひ読んでみてください。

| 図書室 | comments (1) | trackback (x) |

コメント

すーけんネコ様、ご紹介いただき感謝です。HPの方でも、時々、あっ絵本が載っていると思ったことはあるのですが、なんか、解説が素晴らしいですね。
作者の金城先生も嬉しくなるような解説です。ご本人もお伝えしておきます。
だいぶ遅れてのありがとうです。謝謝!

| polee | EMAIL | URL | 2010/01/29 01:41 PM | IYnEy7PE |

コメントする









絵の中の文字を入力して下さい:

NEWEST / PAGE TOP / < NEXT   BACK >

MODE

  閲覧形式: ゲストモード

USER ID:
PASSWORD:

ARCHIVES

<< 2010年09月 >>
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30   

CATEGORIES

PR

SEARCH

RECENT COMMENTS

RECENT TRACKBACK

PROFILE

OTHER